Vol.6 システム設計の技術 ―「箱」から「つながりの仕組み」へ、そして「デリバリー」へ

これまでの連載で、私たちは居場所が「評価を脱ぎ、自分に還る場所」であることをお伝えしてきました。今回は、その「居場所」という概念を拠点という物理的な制約から解き放ち、私たちが目指す未来の支援の姿を展望します。



1. 居場所の再定義:場所(名詞)から状態へ

 

まず、私たちが考える居場所の定義を改めて提示します。

居場所とは:個人が安全で非評価的な関係の中で存在を保障され、安心して自分らしく過ごすことのできる「社会的・心理的空間」を指す。

この定義には、物理的な広さや住所は含まれていません。なぜなら、居場所の本質は建物という「場所(名詞)」ではなく、人と人の間に生まれる「つながりの質(状態)」だからです。

 



2. 「物理的居場所」と「心理的居場所」

 

居場所を成立させるには、二つの側面が必要不可欠です。

  •  物理的な物理的な居場所(ハード)
    「静の場」と「動の場」のように、五感を通じて安心を感じ、自ら選択できる空間の構造。

  • 心理的な居場所(ソフト)
    「この人といると、評価されず否定されない」という関係性の網の目。

大切なのは、特定の建物がなくても、「心理的な居場所(つながり)」があれば人はどこででも回復を始められるということ。



3. つながりを届ける ―― 居場所を「デリバリー」する

 

居場所支援の本質は、特定の建物を維持することだけではありません。本人の周囲に「安心の仕組み(システム)」を構築し、それを「継続」させることにあります。

私たちが描く未来の姿。それは、居場所という「仕組み」そのものを、本人の自宅や地域へとデリバリー(配達)することです。

もし居場所が「建物」に限定されるなら、そこに来られない人は支援から取り残されてしまいます。しかし、居場所が「持ち運び可能な仕組み」であるならば、支援者が本人のもとへ出向くことで、その玄関先やリビング、あるいは近所の公園を、その瞬間の「居場所」へと書き換えることができます。

アウトリーチ(訪問支援)とは、単なる移動手段ではありません。
「相手がいるその場所を、心理的な居場所へと変容させていく技術」なのです。



最後に

拠点を飛び出し、地域全体を居場所に

「すてっぷ」という拠点は、支援技術を磨き、モデルを構築するための大切な母港(ラボ)です。しかし、私たちの最終的なゴールは、拠点に人を集めることだけではありません。

本別という地域全体に、この「つながりの仕組み」を浸透させること。 誰もが、どこにいても「自分はここに居ていい」と感じられる社会を、デリバリーという手法を通じて実現していきたいと考えています。

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